有袋類

童謡でも人気のタスマニアデビルは腫瘍でピンチ

投稿日:2019年9月18日 更新日:

タスマニアデビル

世界中でも様々な珍獣が生息するオーストラリアのタスマニア島ですが、この島を代表する肉食獣といえばタスマニアデビルです。今回は「デビル」という恐ろしい名前を持つ一方で愛くるしい姿を持つタスマニアデビルについてご紹介していきたいと思います。

悪魔の由来はタスマニアデビルの怖い鳴き声

タスマニアデビル

童謡「アイアイ」は子供番組「おかあさんといっしょ」ではすっかりおなじみになり、日本でアイアイの存在を一躍有名にしましたが、最近ではタスマニアデビルを題材にした楽曲「デビル・ビビる・ガンバる!」が登場し、タスマニアデビルの知名度アップに貢献しています。
この歌の歌詞にある通りタスマニアデビルがかわいらしい外見にも関わらず悪魔と呼ばれる理由はその鳴き声にあるといわれています。
タスマニアデビルの鳴き声を実際に聞いてみると年をとった人間が唸っているようにも聞こえ、お世辞にも気持ちのいいものではありません。この鳴き声からデビルの名前が付いたといわれています。
また、オーストラリアを開拓のために入植したヨーロッパ人にとって、タスマニアデビルは肉食動物ゆえに家畜に危害を加える悪魔のような存在であったことや死体をあさって食べる姿から悪魔を連想したこともデビルという名前の一因と考えられています。
タスマニアデビルの嫌われようは相当なものだったようで、1800年代には同じく肉食有袋類のフクロオオカミとともに羊毛・畜産業を営む企業や政府によって駆除の奨励金が変えられたほどでした。

タスマニアデビルは顎の力が強い「森の掃除屋

森の掃除屋タスマニアデビル

タスマニアデビルは現存する肉食有袋類の中で最大の大きさを誇ります。とはいえ、大きさは体長は尻尾も含めて70~90センチほどで中型犬でほぼ同じサイズです。肉食性ということで上あごに生えている2本のキバは鋭く一生伸び続けます。
タスマニアデビル頭部が発達しているため、大型の肉食獣に肩を並べるほど顎の力は非常に強く、体重あたりの噛む力は動物界ナンバーワンです。人間の3倍の力でとらえた獲物を骨まで余すことなく食べつくします。この様子から「森の掃除屋」とも呼ばれることもあります。
タスマニアデビルが捕食するのは主に死んだ動物ですが、生きた動物を捕食することもあり、昆虫や鳥のほかに自分の体よりも3倍ほどの大きさのウォンバットを襲って食べることもあるそうです。ただし、基本的には自分より大きな動物に対しては非常に臆病だといわれています。

多産のタスマニアデビル

タスマニアデビル

タスマニアデビルは他の有袋類の動物と同様、未熟な状態でこどもを出産しある程度の大きさになるまで育児嚢と呼ばれる器官で育てます。
いくつかの有袋類はこの育児嚢を持つことから「フクロ」が頭につく別名を持っていますが、タスマニアデビルも同様に「フクロアナグマ」という別名を持ちます。
タスマニアデビルの出産は非常に多産で20~40匹の子どもを一度に産みます。ただし育児嚢の中に乳頭は4つほどしかなく、母親の母乳にありつけない子どもは生き残ることはできません。
その後、母親から独り立ちしても成獣になるまで育つことができるのは半数ほどで数多く子どもがうまれても育ち切るのはごく少数です。

タスマニアデビルを襲う顔面腫瘍

タスマニアデビルは顔面腫瘍に苦しんでいる

現在、タスマニアデビルはその名のとおりタスマニア島にのみ生息をしていませんが、かつてはオーストラリア大陸本土にも生息をしていました。
しかし、上述のようにタスマニアデビルの駆除が奨励され、その結果オーストラリア大陸本土では絶滅をしてしまいました。
20世紀に入りオーストラリア大陸政府は数の減ったタスマニアデビルを保護する方向に方針転換し個体数が回復してきましたが、1990年代にタスマニアデビルの間に感染症が流行し、タスマニアデビルは再び危機にさらされています。
タスマニアデビルの感染症はデビル顔面腫瘍性疾患(DFTD)と呼ばれ、口の周囲などの顔面に腫瘍が発生し、徐々に周辺の組織に拡大していきます。リンパ節や内臓などにも転移することもあり、最終的には肥大化した腫瘍によりエサを取ることができず命を落としてしまいます。
現在のところ治療に有効な手立てはありませんが、ワクチンの実施実験が開始されたり、DFTDに対抗する遺伝子を持つ個体が生まれるなど将来的には対応策が確立できるのではないかと期待されています。

見た目は可愛らしい印象があるタスマニアデビルですが、デビルの名のとおりの気性や習性を持っています。何よりも全体的に個体数が減少傾向にある有袋類であることに加えて恐ろしい感染症の被害にもあっているため、絶滅が心配されています。
タスマニアデビルを守るため、人間が手立てを打たなければならない時が来ているようです。

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