
世界中に数多く生息している動物の中でも一風変わった名前を持つのがナマケモノです。動きや動作の遅さからこのような名前が付けられているのですが、本当にナマケモノは名前通りの動物なのでしょうか。
今回はナマケモノの生態についてご紹介していきたいと思います。
木の上に住むナマケモノの握力と怖い歩き方

ナマケモノには5つの種に分類されていますが、いずれも南アメリカから中央アメリカの地域の熱帯林地域に生息しています。ナマケモノは木の枝にぶら下がっているイメージが強いのですが、実際にナマケモノは生涯の大半を樹上で過ごします。不安定な木の上でナマケモノが長時間過ごせる秘訣は何でしょうか。ナマケモノの前足の指には長いかぎ爪が生えており、この爪を木の枝に引っ掛けて木にぶら下がっ
て生活をしているのです。ナマケモノの握力は死後も弱まることはなく、息絶えた後も木につかまったままであることが知られています。
樹上からほとんどおりてこないナマケモノですが、まれに地上に降りてくることもあります。地上では筋力の弱いナマケモノの後ろ脚は役に立たず、筋力の多い前足で這うように歩きます。その姿はゾンビさながらでちょっとした恐怖感も感じます。
ナマケモノの歩くスピードは時速1600メートルといわれており、地上では簡単に天敵である大型の肉食獣に襲われてしまいます。
ナマケモノの天敵と生存戦略と威嚇ポーズ

ナマケモノは英語でも怠け者という意味の「sloth」という意味があり、その名の通りゆっくりな動きをしています。そのため天敵も多く、天敵に見つかるとすぐに捕食されてしまいます。
ナマケモノの天敵としてあげられる動物の代表格は猛禽類最大の大きさを誇るオウギワシが挙げられます。ある調査ではオウギワシの獲物の50%がナマケモノだったという記録もあります。また、ピューマやジャガーといった大型の肉食獣も天敵で地上にナマケモノが下りると高い確率で襲われてしまいます。
多くの天敵によって命を狙われているナマケモノですが、襲われる危険性が高いのにも関わらずなぜのこのように樹上でじっとしている生活を選んだのでしょうか。
その理由は実は全く動かないことが外敵から身を守ることにつながるためです。ナマケモノは1日の大半を樹上で寝て過ごすのですが、その寝姿は頭を体に隠し、木と同化するように擬態をし天敵の目を欺きます。
ジャガーなどの大型の肉食獣は動く相手に対しては非常によく気が付くのですが、じっとしているものに対してほとんど注意を払わない特性があります。
つまり動きがゆっくりなため見つかるとすぐに襲われてしまうナマケモノが身を守る最良の方法は見つからないためにじっと動かないことなのです。
ちなみにナマケモノは天敵に襲われた際には両手を大きくあげて威嚇をすることもあるのですが、怖さなどはなくほとんど効果がないようです。
ナマケモノゆえの独特な死因

自らの命を守るためにじっと動かないことを選択したナマケモノですが、動かないことに関しては徹底しています。
ナマケモノはほとんど食事することはなく、1日に食べる量は何と8グラムのみともいわれています。ナマケモノは恒温動物であるほとんどの哺乳類とは異なり、外気温によって体温を変化させる変温動物なのです。そのため、代謝でエネルギーを消費することがなく、少ない食事量をカバーすることができるのです。
ただし、気温の低い日が続くと変温動物のナマケモノの体温も比例して下がり、消化を助ける腸内細菌の動きが悪くなります。そのため満腹であるにもかかわらず、餓死をしてしまうこともあるようです。
動かないゆえに多い外敵から生き抜くためより動かないという変わった動物のナマケモノ。その生態に合わせた進化を遂げたある意味究極の生物なのではないでしょうか。