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ヤマアラシはハリネズミともアメリカヤマアラシとも違う

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ヤマアラシ

厳しい野生の世界では生き残るために他の動物と異なった特徴を持つようになった動物が数多く存在します。背中にたくさんのとげを持つヤマアラシもそんな動物の1つではないでしょうか。
今回は肉食獣も恐れるとげを持つヤマアラシについてご紹介していきたいと思います。

ヤマアラシとハリネズミとげを持つ動物

ヤマアラシ

自然界の食物連鎖の頂点に立っているのは、基本的に大型の肉食動物です。そんな大型の肉食動物に捕食される動物たちも身を守るために進化を遂げました。体にとげを持つこともその一つでヤマアラシのほかにハリネズミやハリモグラといった動物にそのような特徴が見られます。
ヤマアラシとハリネズミ、ハリモグラの違いはどのようなところにあるのでしょうか。
そもそもこの3種の動物は分類からして別物で、ヤマアラシがネズミ目ヤマアラシ科。ハリネズミはハリネズミ目ハリネズミ科、ハリモグラはカモノハシ目ハリモグラ科の動物で全く異なります。大きさも1メートル近い大きさのヤマアラシに対してハリネズミは大きいものでもせいぜい30センチ程度とかなり差があります。
しかし、最も異なる点はトゲの使い方ではないでしょうか。
ハリネズミやハリモグラは敵に襲われたときに体をのとげを立てたり丸まったりすることで身を守るのですが、ヤマアラシは外敵に襲われた際、背中のとげを使って積極的に攻撃を仕掛けます。

ヤマアラシは硬いトゲをとばして武器にする?

ヤマアラシ

背中のトゲを武器に攻撃を行うヤマアラシですが、トゲはどのようなものなのでしょうか。ヤマアラシのトゲは体毛が変化したもので非常に硬くプラスチックのような質感です。このトゲはアルミ缶やゴム長靴などであれば貫くことができるほどの攻撃性を秘めています。
普段はこのトゲを寝かせていますが、外敵に襲われた際には逆立て敵を威嚇したり後ろ向きに体当たりして攻撃をします。
この攻撃は大型の肉食獣であっても時に致命傷を与えるほどの力を秘めています。
トゲは元は体毛ということで、抜け落ちることもあり、抜け落ちた後は新しいトゲが生えてきます。以前はこのトゲを飛ばして攻撃をするとも考えられていましたがそのようなことはないようです。

ヤマアラシとアメリカヤマアラシの違いは生息地だけではない

ヤマアラシ

ヤマアラシはアフリカやユーラシア大陸、南北アメリカ大陸と世界中に広く生息していますが、実は旧世界と呼ばれるアフリカ大陸、ユーラシア大陸に生息する仲間と新世界と呼ばれる南北アメリカ大陸に生息する仲間には違いがあり、むしろ共通点のほうが少ないといわれるほどです。
旧世界に生息する仲間はヤマアラシ科に分類される一方で新世界に生息する仲間はアメリカヤマアラシ科を構成しています。アメリカヤマアラシ科の仲間は分類によってはヤマアラシ科よりもテンジクネズミ科に近い動物であるさえ考えられています。
どちらも夜行性の動物で果実や草、木などを食べる草食性という共通点を持っていますが、アメリカヤマアラシ科は樹上生活に特化しており、木登りに適した丈夫な爪を持っているほか気に巻き付けることができる尾をもつものもいます。
一方で旧世界に生息するヤマアラシ科の仲間は森林や草地、砂漠など地上で生活しています。
この2種類が同一に扱われる理由として新世界に進出したヨーロッパ人が旧世界の仲間と混同し、区別をつけなかった名残のようです。

エヴァンゲリオンでも取り上げられたヤマアラシのジレンマ

ヤマアラシのジレンマ

ヤマアラシを取り上げた心理学の用語に「ヤマアラシのジレンマ」というものがあります。元はドイツの哲学者ショーペンハウアーの寓話を元にしたものでフロイトが論じ、精神分析家のベラックが名付けたものです。
その内容は寒い夜にヤマアラシ同士が身を寄せ合って温まろうとしますがそれぞれ自分のトゲで相手を傷つけあってしまいます。そこで距離をとるのですが、再び寒さがヤマアラシを襲います。結局、何度もそれぞれの距離をはかりちょうどよい距離感を見つけることができたというものです。
ヤマアラシを人間に置き換えたもので人間関係を築くうえでお互いが許容できる最適な距離をはかることの大切さを例えています。
この言葉を日本で有名にしたのが1995年に放送され、社会現象にもなったアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」です。
アニメ本編でも言及するシーンが描かれ、第四話「雨、逃げ出した後」のサブタイトルになっているのが「Hedgehog’s Dilemma」という形で登場しています。
「Hedgehog’s 」はハリネズミの英訳で、ヤマアラシのジレンマは英語圏では「ハリネズミのジレンマ」として表記されることが一般的なのだそうです。

小さな目となんとなく愛嬌のある顔立ちの一方、気性のあらさと恐ろしいトゲを持つヤマアラシ。実は飼育下では人になつくことも多いようです。比較的多くの動物園でその姿を見ることができますので、トゲの迫力を実際に感じてみてはいかがでしょうか。

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