
世界各地で家畜やペットとして親しまれているブタですが、元をたどるとイノシシの仲間に行きつきます。そんなイノシシの仲間の中でも日本人にはあまり馴染みのないペッカリー。今回はそんなペッカリーの生態や特徴についてご紹介していきたいと思います。
ヘソイノシシとも呼ばれるペッカリーの特徴

イノシシの仲間であるペッカリーは現在「クチジロペッカリー」「クビワペッカリー」「チャコペッカリー」の3種類に分類されます。
それぞれ南米地域に生息しており、クチジロペッカリーはメキシコからパラグアイにかけての熱帯雨林地域、クビワペッカリーは北アフリカ大陸の南西部から中米、南アメリカ大陸のアルゼンチンあたりまでの地域に幅広く生息。チャコペッカリーはその名前がさしている通りアルゼンチン、パラグアイ、ボリビアといったグランチャコの地域に生息しています。
体は日本などに生息するイノシシと比較すると一回り小さくキバも小さく体毛は黒っぽい色をしているほか、足が細いのがイノシシとの違いです。
ペッカリーは日本名で「ヘソイノシシ」と呼ばれているのですが、これは背中のっ真ん中あたりに一種の臭腺があり、ヘソのように見えることからこのように呼ばれるようになりました。
この臭腺から臭いを放つことによって同じ群れ同士であることを識別したり、コミュニケーションを図っていると考えられています。
絶滅と考えられていたペッカリーはおとりを使う動物

現存が確認されている3種類のペッカリーのうち、チャコペッカリーは1974年まで化石は発見されていましたが、生きた個体が確認されておらず、すでに絶滅した動物であると考えられていました。しかし1974年にアルゼンチンで生存が確認されたことで、現在まで生き延びていたことが明らかになりました。
そんなペッカリーの特徴的な習性に「サクリファイス」というものがあります。ペッカリーは移動をする際に群れを成して1列になって移動をします。その際に天敵であるジャガーなどに遭遇すると、群れの中の1匹がおとりとなって敵を引き付け、その間に残りのペッカリーは安全な場所へ逃げます。
おとりとなったペッカリーはやはり襲われて捕食されてしまうケースがほとんどですが群れの生存を最優先にしたまさにサクリファイス(生贄)といえるでしょう。
しかし、ペッカリーは開発による自然環境の悪化やユーラシア大陸から人間によって持ち込まれたブタなどが繁殖し生息域の侵略もあり、生息数は大きく減少傾向にあります。
岡山県のゆるキャラでもあるペッカリー

上でも紹介した通り、ペッカリーの生息地は中心地である南アメリカ大陸のほか、北アメリカ大陸のメキシコなどに生息しているのみです。日本でイノシシといえばユーラシア大陸に生息してるイノシシの亜種である二ホンイノシシが主流ですが、岡山県備前市ではペッカリーがゆるキャラとして採用されています。
名称もそのまま「ペッカリー」という名前で岡山県備前市にあるBIZEN中南米美術館のPRキャラクターとして活躍をしています。
この美術館に収蔵されていて来館者にも人気の高い「ペッカリー象形土偶」がモデルとなっています。この土偶はエクアドルで紀元前1200年前から紀元前200年前に栄えたチョレーラ文化の時代に作られたもので、すでに当時の人々にとってペッカリーが身近な存在であったことを示しています。
ゆるキャラのペッカリーも同様で現在は美術館のPRにとどまらず、自発的に岡山県のPRソングを制作するなど備前市の知名度向上に一役買っています。
冒頭で紹介した通り、日本人には馴染みのないイノシシのペッカリーですが、南米では紀元前から親しまれており、岡山県でもその知名度を向上させています。絶滅が心配されているペッカリーですが、少しでも関心を持ってもらえることを祈るのみです。