
体に角をもう生物は数多く存在しますが、イッカクほど強烈な印象を与える角を持つ動物もなかなかいないのではないでしょうか。
今回は北の海に住む珍しい生物であるイッカクとについて
・イッカクはクジラなのかイルカなのか
・イッカクの見ることができる水族館
・食用としてのイッカク
以上についてご紹介していきたいと思います。
イッカクはクジラ?それともイルカ?

大きな角が印象的なイッカクですが、魚ではなくれっきとした哺乳類です。
海に生息する魚に似た哺乳類の代表格はイルカとクジラですが、イッカクはクジラとイルカどちらにあたるのでしょうか。
実はクジラとイルカは生物分類学上の血がいはなく、両者の違いはその大きさのみなのです。
明確な定義はないようなのですが体長が4メートルを以上のものがクジラ、4メートル以下のものをイルカとして分類されることが多いようです。
イッカクは大きいものは全長が4.5メートルほどになりますのでクジラに当たります。
通常のクジラとイッカクの違いは大きな角ですが、ほかにイッカクは非常に用心深い生物で絶対にジャンプをしません。
生物学区上の分類は偶蹄目イッカク科に分類されており、このイッカク科に所属する生物はイッカクのほかに、ベルーガとも呼ばれているシロイルカのみです。イッカクは年齢を重ねるにつれて体色が白くあるため、高齢のイッカクはシロイルカに誤認されることもしばしばあるようです。
この2種はまれに交配することもある他、カナダではシロイルカの群れに混ざる若いイッカクの姿が確認されたこともありました。
また、イヌイットにはイッカク神話と呼ばれる神話があります。ある女性がモリをにしがみついたまま海に引きずり込まれました。やがて女性にシロイルカが包まり銛は牙(角)に代わりイッカクとなったものです。
近縁種同士、イッカクとシロイルカのかかわりは深いようです。
イッカクのいる水族館とウォッチング

伝説上の動物である考えられていた時期もあるイッカク。その神々しい姿を実際に見てみたい方も多いのではないでしょうか。
しかし現在、イッカクを飼育している動物園は日本はおろか世界中見渡してみてもひとつもありません。
イッカクはとても神経質な動物で水族館など、人間の飼育下では長く生きることができないのです。
最期にイッカクを飼育しようとした試みは1970年。カナダで捕獲した個体がアメリカ・ニューヨークの水族館に送られ飼育を試みたのですが1か月足らずで亡くなってしまいました。
野生のイッカクは50年ほど生きるともいわれており、それが1か月ほどしか生きられないということはイッカクの飼育がそれだけ難しいことを物語っています。
またイッカクの大きな特徴である角をケアできる環境を用意できないことも水族館で飼育ができない要因になっていっるようです。
飼育下で姿を目にすることができないイッカクですが、野生の個体をウォッチングするチャンスはあります。
イッカクの生息地は北極海の沿岸地域で氷きっていない氷海の海域です。
時期にもよりますが、カナダの北部バフィン島北部にあるポンドインレットはイッカクが回遊する地域として有名で5月末から6月ごろ白夜ともにイッカクをウォッチングすることができるため多くのツアーが組まれています。
イッカクはビタミン豊富でナッツの味

大きな角を持つイッカクですが、装飾品や漢方薬などその角を目当てに狙われることも多い動物です。
数も減少傾向にあり、現在は準絶滅危惧種に指定されています。
現在、イッカクの捕獲は禁じられていますが、伝統的なイッカク猟の文化が残るイヌイットに対してはイッカクの捕獲が許されています。
イヌイットによって捕獲されたイッカクは食用とされています。
イヌイットはイッカクを生で食べるのですが、生の脂身はヘーゼルナッツに似た味といわれ、30グラムでオレンジ1個分相当のビタミンCが含まれていると言われています。
イヌイットの人々はイッカクの肉を冬に向けて大量に貯蔵し冬場のビタミン摂取に役立てています。
大きな角を持ち、雄々しい印象も感じられるイッカクですがその一方で実は神経質だったり、シロイルカとの関係など意外な一面もあるようです。