
動物の中でもユーモラスな姿をしているゾウ。そんなゾウの一番の特徴といえば長い鼻でしょう。人間の手のように起用にものをつかむ鼻は他に類を見ない特徴です。
今回はそんな鼻をはじめ、ゾウの牙やツメなどゾウの体の秘密を紹介していきたいと思います。
ゾウの鼻が長くなった理由

アジアやアフリカなどに分布しているゾウですが、北アフリカで発見された約5000万年前の化石から最初の仲間が発見されています。
その祖先の鼻は決して長くありませんでした。大きさもさほど大きくなく、短足胴長の背の低い動物でした。生息地は水辺周辺で半水棲生活をしていたそうです。
その後、地形の変動につれて生息地を広げ、草原で暮らすようになり、豊富な食料により次第に体が大きくなりました。
しかし体が大きくなったことで水辺で水を飲むことや地面に生えている草を食べることが難しくなってしまい、鼻が長いものだけが生き残ったことがゾウの鼻が長い理由といわれています。
ゾウの鼻はシュノーケルという説も

人魚のモデルとも言われている海洋生物のジュゴンですが、実はその祖先をたどっていくとゾウの祖先に行きつきます。つまりゾウとジュゴンは同じ祖先を持つ仲間なのです。
上述のとおりゾウの祖先は水辺近くに暮らす半水棲の動物だったのですが、この仲間のうち陸上での暮らしを選んだものがゾウの仲間に水中での暮らしを選んだものがジュゴンの仲間になったといわれています。
しかしゾウの仲間も水中の生活に適応するための進化をしており、長い鼻はそうした進化の一環であるという説があります。
ゾウの内臓や呼吸器の構造が水中に住む哺乳類に近い構造になっていることが根拠で、長い鼻は水中で呼吸をするために長くなったという主張です。
現に野生のゾウが対岸にある餌を得るために泳いで川を渡ることがあるのですが、その際も鼻をシュノーケルのように使い呼吸をしています。
しかし確固たる証拠もなく初期のゾウの仲間が長い鼻を持っていないことからこの説は支持を得られていないそうです。
手の代わりだけじゃない鋭い嗅覚

ゾウの象徴ともいえる長い鼻。まるで手のように器用に物をつかんだり運んだりするのが印象的ですが、実は嗅覚にも優れているのです。
研究によるとアフリカゾウの鼻にはにおいを感じ取る嗅覚受容体と呼ばれる遺伝子の数が約2000種類存在するとわかりました。
嗅覚受容体は鼻の奥にある嗅上皮の嗅細胞に含まれているものです。嗅上皮に空気中のにおい物質が触れると嗅覚受容体から信号が送られ、においを感じます。
嗅覚受容体が多いほど多くのにおいが判別できると言われています。
人間の嗅覚受容体は400種類、犬の嗅覚受容体は800種類といわれており、単純に考えると犬の2倍以上も鼻がきくということになります。
ゾウはその優れた嗅覚を活用し、自分たちに危害を加える人間かそうでないかを判別しているともいわれているほか、火薬のにおいをかぎ分けて地雷撤去に役立てるという構想もあるようです。
密猟とゾウの牙・象牙

長い鼻に隠れがちですが、ゾウには大きな牙が生えています。特にオスのアフリカゾウは巨体に立派な牙が勇敢なイメージを演出しています。
しかしそのゾウの牙を狙って多くのゾウが密猟の被害にあっています。
ゾウの牙である象牙は人間でいう上あごの前歯が発達したもので、ゾウは象牙を使って木の皮をはいで食べたり、土を掘って木の根を食べるほかオス同士のけんかにも使用します。
象牙は美しい材質で加工も簡単なため古くは高級な印章やピアノの鍵盤の材料にされていたほか、漢方薬としても使用されていました。
しかし、象牙を目当てにしたゾウの乱獲が起こり、絶滅が危惧されたためワシントン条約により象牙の国際取引が禁止されているほか、多くの国で国内での象牙取引を禁止しています。
一方で象牙を狙う密猟者も後が絶たちません。
近年では大きな牙を持つゾウが密猟の対象になるのに対して牙の小さいゾウが生き残り結果的に小さな牙のゾウ弥牙の持たないゾウが増えているそうです。
いかがだったでしょうか。何気なく見ていたゾウのからだの特徴ですが、意外な秘密が隠されていました。
現地では人間とも近い存在のゾウが安心して暮らせる環境を守っていきたいですね。