
日本から遠く離れた南の島に住む動物ですが、日本人にとってよく知られている動物がアイアイです。童謡「アイアイ」が子供番組で歌われることで広くその存在が知られるようになりました。なぜ、メジャーとも言えないアイアイが取り上げられたのでしょうか。アイアイと生息地である南の島とともにご紹介していきたいと思います。
南の島に住むアイアイの生息地

童謡の「アイアイ」では南の島に住むことが歌われているアイアイですが、いったい歌に出てくる南の島とはいったいどこのことなのでしょうか。
アイアイが生息している島はズバリ、マダガスカル島です。アイアイはこの島の北部、東部、中西部のみに生息しています。
マダガスカル島はアフリカ大陸の南東、インド洋上に浮かぶ島です。マダガスカル島は日本の国土の1.5倍の面積を誇る世界で4番目に大きい島であることに加えて、この島だけでマダガスカル共和国を成しています。
マダガスカル島に生息する動物の8割がこの島の固有種とも言われ、外界から影響を受けなかったこの島独特の進化をたどった動物が数多く見られます。
中でもアイアイをはじめとしたサルの仲間は原猿類と呼ばれ、マダガスカル島でしか見られない原始的な姿を保っています。
絶滅寸前のアイアイはマダガスカルの「悪魔の使い」

アイアイは他の原猿類の仲間がそうであるのと同様に夜行性で日が沈んでから活動をしています。アイアイは夜行性の動物では珍しく、色が識別が可能であることがわかっています。
また熱帯雨林で樹上生活をしており、めったに地上に降りてくることはありません。
そのため人間に姿を現すことも少なく、最初に発見され、分類をされてからしばらく、見つけられなかったこともあり一時は絶滅していたとも考えられていました。
現在もアイアイは絶滅が心配されており、レッドデータリストにも絶滅危惧種として登録をされています。
数を減らしている要因として他の多くの動物と同じく開発による生活環境の破壊が挙げられますが、島民により見つかったアイアイが直ちに駆除されてきたことも大きな理由の1つです。
アイアイは現地の人々が栽培するライチやマンゴーなどの果物を荒らす害獣であることに加えて、現地の住民にとって「悪魔の使い」とされていることから駆除の対象とされてきました。
上述のとおり夜行性で夜にしか姿を現さず、大きな丸い目や悪魔のような長い指は確かに気味が悪く、現地では姿を見かけることは「不吉の前兆」とされ、長い中指を刺された人は魂をとられともいわれています。現地の人々のアイアイへのイメージは日本の童謡にあるような明るく朗らかで可愛らしい印象とはまるで対局なもののようです。
現在はアイアイを保護する法律が整備され、生息数の減少は一時期とくらべて回復しているとされています
なぜ不気味なアイアイが童謡になった

アイアイが住む「南の島」であるマダガスカルでは忌み嫌われているアイアイですが、日本でのイメージは「可愛らしいおさるさん」というものが根強いはず、その印象を決定づけたのは紛れもなく同様の「アイアイ」でしょう。
NHKの子供番組「おかあさんといっしょ」でも頻繁に歌われており、2018年には保育士試験の課題曲にもなったほど、日本人にはおなじみの童謡です。
なぜ「悪魔の使い」とも呼ばれるアイアイが童謡の題材になったのでしょうか。
童謡「アイアイ」の作詞を行った相田裕美が、動物を題材にした楽曲の作詞を依頼された際に「アイアイ」という可愛らしい名前と動物図鑑の情報を元に作詞を行ったため、現地で不吉なものとして扱われていることを知らかったそうです。
このため、「ひょっこりひょうたん島」の作曲者でもある宇野誠一郎の手掛けたコミカルな曲調も相まってアイアイのイメージが決定づけられました。
童謡「アイアイ」が発表された1962年ですが、そのころはまだ海外旅行に関する規制も多く、遠く離れた島に生息する珍しい動物についてほとんど情報を得ることが出来なかったのではないでしょうか。
そんな行き違いもあり、マダガスカルでは不気味な存在のアイアイが日本では広く親しまれていることは少し不思議ではありませんか。